昭和末までは順調だった

1 21世紀は日本の世紀だ

 敗戦で海外領土(満州、朝鮮、台湾、南樺太、千島)を失ったが戦後の日本は経済は急速に回復した。昭和55年の経済白書では日本のGDPが初めて戦前を凌駕し「もはや戦後ではない」という副題がついた。1960年には安全保障条約が改定され、安保騒動で盛り上がった反政府運動を冷却させるための所得倍増計画が成功した。経済を成長させることで不満を解消し政権を維持し続けるという方針に自民党は転じた。経済成長によって国民生活の改善を図る方策に徹した。憲法改正などは放置され現在まで制定された時のまま続いている。オイルショックで短い停滞を経験したが高度成長は続いた。1972年にはGDPで世界2位になり、経済大国と言われるようになった。GDPの大きさは米国の6割を超え、自由世界のなかで日本の一人勝ちと言われるような状況になった。未来学者のハーマン・カーンは「21世紀は日本の世紀だ」と言う本を書いた。

2 一億総中流社会

所得倍増計画の成功に引き続く高度成長で1970年の国民意識調査で自分の生活レベルを中の上、中の中、中の下と答える人の割合が8割を超えて一億総中流社会と評された。1968年に国民総生産(GNP)が世界2位になり、テレビ、洗濯機、冷蔵庫の普及、正社員の増加、自動車の普及などもあって日本人の生活水準が大幅に向上し、自分を中流と意識できたものと思われる。

ご挨拶  平成日本の失敗の本質